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コックカワサキ讃

0.

 僕はTVゲームをあまりやらない方だが、「カービィのエアライダー」のシティトライアルにはどっぷりハマってしまい、かれこれ800時間余りもプレイしてきた。僕にとって、ゲームとは心に押し寄せる恐怖を和らげるための手段の一つだ。ゲーム内で優秀な成績を獲ることはさほど重要ではない。したがってシティトライアルで1位を獲ることも目的ではなく、あくまでスカイアとスタジアムでの経験そのものに重きを置いている。この記事はシティトライアルの攻略とはなにも関係がない。単なる僕のお気に入りのライダーのTier表の解説と、Sランクに据えたコックカワサキへの讃美を兼ねた記事である。

1.

 僕はシティトライアルをプレイするとき、ライダーとして専らコックカワサキを選ぶ。僕がライダーを選定する基準は性能ではなく、彼らの仕草のほうにある。実際シティトライアルにおけるコックカワサキは強いライダーではない。得意なスタジアムはせいぜいビッグバトルぐらいで、重量級の割に攻撃力が低く、スペシャルはスカイアにおいて強くない。

コックカワサキは加速・旋回・グリップのステータスが低い典型的な重量級ライダーでありながら、攻撃力は並だ
コックカワサキは加速・旋回・グリップのステータスが低い典型的な重量級ライダーでありながら、攻撃力は並だ

 では、僕がコックカワサキをひいきにする理由は何かというと、彼が勝敗のことをまるで考えていないように振る舞うからだ。彼はいつも笑っていて、ライバルにやっつけられるときでさえ笑みを絶やさない。スペシャルは火を吹く辛さのカレーをばらまくことだが、カレーをまいている時でさえ彼にはライバルへの敵意というものがないだろう。スタジアムでたとえ1位を獲れなくても、彼は右手にカレーを掲げて笑っているだけである。これらの素振りが、先程述べた僕のゲームにおけるスタンスと相性がとても良いのである。

やっつける方もやっつけられる方も常に口に笑みを絶やさないのがコックカワサキの特徴である
やっつける方もやっつけられる方も常に口に笑みを絶やさないのがコックカワサキの特徴である

2.

 では、他のライダーはどうだろうか。改めてTier表という形で僕個人のお気に入りのライダーをまとめてみた。これはそのまま戦意のなさのランキングともいえる。シティトライアルという競技の性質もあってかライダーは血気盛んな者揃いであるが、彼らの所作を細かく見ていくと確かな違いがある。

 Dに入れたライダーは好戦的な態度をとる。僕が最も苦手とするタイプだ。ナックルジョーはほとんどいつも怒り眼をしていて僕の性に合わないから最下位に置いた。バンダナワドルディは順位発表のとき何故か怒り眼になるから同じくDである(ナイス着地やゴールなどでにっこりするワドルディとは雲泥の差がある)。

ナックルジョーがナイス着地で笑うことはあまり知られていない
ナックルジョーがナイス着地で笑うことはあまり知られていない

 Cのライダーは表情に乏しく、驚きや喜びをほとんど表情に出さない。ナイス着地で笑うライダー(デデデ大王、ロッキー)をCの上位に置いている。なおデデデ大王はいつも口が笑っているが、どちらかというとそのアヒル口は無機的な硬さを感じさせるのでCに置いた。のっぺらぼうのスターマンは残念ながらCの最下位である。

デデデ大王のナイス着地
デデデ大王のナイス着地

 Bは笑っていることが多いが、どこか冷めた印象を与えるライダーを置いた。特にコメントすることはない。

ドロッチェは冷笑的というより、気障な笑みを浮かべる
ドロッチェは冷笑的というより、気障な笑みを浮かべる

 Aには喜びを露にするライダーを置いた。先に述べた通り僕は争いごとが嫌いなので、闘いに勝った時に露骨に喜ぶようなライダーはあまり好みではないが、彼らの笑みはBのライダーたちにはない無邪気さを感じさせる。スカーフィは1位を獲ると凶暴化するのでAの最下位に置いた。

跳ねながら喜ぶスカーフィの無垢さはカービィを凌ぐが、凶暴化が大きな減点要素となった
跳ねながら喜ぶスカーフィの無垢さはカービィを凌ぐが、凶暴化が大きな減点要素となった

 Sにはコックカワサキとグーイを置いた。この2体はおそらくシティトライアルのルールを理解していない。グーイがコックカワサキに一歩譲るのは、その互い違いの目と長い舌が、能天気さというよりかは狂戦士的な性格を思わせるからである。

グーイのナイス着地
グーイのナイス着地

3.

 コックカワサキは無垢なライダーである。アニメ版カービィでの「しんだんじゃないの~?」「仕事きついよ給料安いよ休みないよ」(CV:飛田展男)等に代表される他人のことを考えない性格付け、裸エプロン、その肥満体から、彼のことをよく思わない人たちもいる。

 しかし、ここでいう無垢とは、善良であるという意味ではない。むしろコックカワサキは善悪の判断以前に、自分の置かれている状況をあまり深刻に受け止めていないように見える。料理を作れば失敗し、サイコパス発言を連発し、ひどい目に遭っても次の場面では何事もなかったようにしている。そこには立派な人格者としての無垢さではなく、周囲の事情に対する妙な鈍感さがある。

 「カービィのエアライダー」でもその鈍感さは健在である。スカイアでは他のライダーがマシンを奪い合い、パワーアップを集め、互いに攻撃し、来たるスタジアムに備えている。その中でコックカワサキも一応同じことをしている。しかし僕には、彼(とグーイ)だけがその競争の意味をよく分かっていないように見える。殴られても笑っているし、殴るときも笑っている。カレーをばらまくときも笑っている。1位になっても、最下位になっても、だいたい同じ顔をしている。

 もちろん、実際に彼が何を考えているのかは知らないし、彼は架空のキャラクターにすぎない。けれど、800時間もシティトライアルをやっていると、画面上のちょっとした仕草にこちらが勝手に人格を見出すようになる。そして僕がカワサキに見出した人格は、「勝ちたい奴」ではなかった。僕はそこが好きなのだと思う。

みなさんもカワサキを使ってみてください
みなさんもカワサキを使ってみてください

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